Rainy Garden
ブレイズメイン ver.
没ネタ

「Rainy Garden Chronicle」の没ネタ。シャドウとオメガが消えたところから。  ブレイズはしばらく忙しくしていたので、今日初めてそれを知ったのだった。心配だった。シャドウは国防軍の心強い戦力という以前に彼女の大切な友人の一人であり、いつだってとても大きなものを背負っているように見えていた。今日はマリンと出かける約束をしていたのだが、それどころでないことは少し考えればわかると思った。約束はまた次の機会にして、今日はシャドウを探しにいこう、そう言うと 「嘘つき」  マリンはへそを思い切り曲げた。 「ブレイズの嘘つき」  繰り返す。彼女のその気持ちはわからないでもない。前から約束していたのだし、マリンはそれをとても楽しみにしていたし、ブレイズだってもちろん楽しみにしていた。だがそれより大切で、急を要することだってある。ブレイズは湧き上がる怒りを抑えて大きくため息をついた。 「……お前はシャドウが死んでいても構わないんだな」 「そんなこと言うてへんやん」 「そう思っていなければ出ない言葉だ」 「ブレイズはうちよりシャドウの方が大切なんや!!」 「次元が違う」 「――ほんなら、ほんならな、うちらの目的地に、シャドウ探しに行ったらええやん! シャドウだっておるかも知れんし、一石二鳥や! どうやブレ……」 「ふざけているなら帰れッ!!」  背を向けて、ヒールを鳴らして歩き去ったブレイズの後ろで、マリンはくしゃくしゃな顔をして泣き始めた。嗚咽が漏れ、声が上がる。  その横で、シャドウ達のことを伝えたシルバーはただおろおろするだけだった。女の子の扱いは苦手で、まして泣いている女の子はもっとどうしたらいいかわからなかった。手を広げ、差し出そうとして引いて、あのさ、と声をかけてみるが聞こえているかもわからない。引き際を失い、とにかく浮かんだ言葉を続ける。 「――泣くなよ、なあ、大丈夫だよ。また次行けるって。ブレイズ約束は守るやつだし……いや、今回はほら、ちょっとあれだったけど、次は行こうって言ってたしさ、なあマリン、しょうがな……」  ぶわああと再び涙と嗚咽がこぼれ始め、シルバーは慌てて、ああもう泣きたい、と思うのだった。  ――ああ、どこ行ったんだ、シャドウ。  しばらくそこでおろおろしていると、ブレイズがレーダーのようなものを持って戻ってきた。マリンはすでに座り込み、抱え込んだしっぽに顔をうずめてぐすぐすとそれでも泣いている。隣に座ったシルバーは顔を上げ、彼女の対応に期待して少しほっとする。 「エメラルドの反応を追う。流石に手放さないはずだ。移動のスピードを見れば判断もつく。お前も来るだろう、シルバー」 「そりゃ、もちろん。――けど」  いいのかよ、と目で問う。大人しくなっていたマリンが再び泣き出す。困り果てた情けない顔を見て、ブレイズが自分よりよほど人との関わりに疎かったことを思い出す。ダメだこりゃ。 「――マリン」  ぎゅう、としっぽを強く抱え込む。 「来なくていいぞ」 「いくッ!!」  ほとんど当てつけだった。 「足を用意させた。落とすなよ、シルバー」 「落とすって、何を」  顎でマリンを示され二輪かと気づいた。逃がすものかとばかりマリンがシルバーの腕をつかんで鼻をすする。  エンジンをかけ、走り出した。  レーダーを持つブレイズが先行し、マリンを腰にしがみつかせたシルバーが追走した。初めて後ろに乗せた相手はマリンと言えど女の子で、ちょっとドキドキしたらどうしようかと思っていたがそんなことはなかった。腰毛をつかむ力が強すぎて若干痛い。少し大人になる。  遠いかと聞くとそれほどでもないと答えた。案外大したことにはなっていないのかもしれないと一瞬胸を撫で下ろすが、ブレイズの鬼気迫る様子は尋常ではなかった。規制を完全に無視したスピードの皇女を必死で追い、違反と知りつつ横に並ぶ。風圧に負けない声で叫ぶように呼びかける。 「ブレイズ!」 「なんだ」 「――アンタ、シャドウがいる場所のこと知ってるのか?」  図星のようだった。黙り込む。 「なにがある?」  長い沈黙が落ちた。 「――ありえないとは、思うんだが」 「話せよ」 「……監獄島だ。シャドウの生みの親が、そこで死んだと聞いた」 To be not continued. ブレイズ自身にシルバーの知っている「ブレイズ」を否定させる展開を狙っ て挫折しました

−メイ−